大徳寺の和尚が考案し伝授した銘菓

松屋常盤 京都御所の南門である堺町御門から南北の通りを南に下ったあたりにたたずむ菓子舗。創業は、承応年間といわれ当時から御所や大徳寺、茶道の家元などに和菓子を納めてきた。その伝統はいまも続いている。代表的な銘菓の味噌松風も、大徳寺住職だった江月和尚だったと伝えられる。ちなみに、江月和尚の没年は、当店創業の十年ほど前の寛永二十年だから、和尚からこの菓子の製法を伝授されてから店を開いたことになる。なお、現当主で十六代目。
 その味噌松風とは、西京味噌と小麦粉に砂糖を加えて練り、表面に黒胡麻を散らして焼きあげた菓子。厚さは4センチほどで、食べやすい大きさに切り分けていただく。表がこんがりときつね色で、見た目には和風のカステラを思わせるが、やや堅めのしっかりした食感が特徴だ。西京味噌の香ばしさと抑えた甘さは、とりわけ茶人好みといえる。
 ちなみに、その風雅な名も謡曲の「松風」に由来する。「浦寂し、鳴るは松風のみ」という一節を、裏に焼き色が付かないので寂しいということをかけた、いわば言葉遊びなのである。ちなみに、この味噌松風は、松屋常盤の店頭でしか買えない。しかも、当日売りには限りがあり、あらかじめ予約しておくほうがいい。また、地域によっては宅配便などで送ってくれる場合もある。

味噌松風は歴代の天皇にも愛された

創業以来、家族だけでやってきた店ですから、その意味では一子相伝ということです。菓子のつくり方も、燃料が炭から電気に変わっただけで、それ以外は昔のままです。代々、先代の製法を見よう見まねで覚えてきたわけでして、それは今後とも変わることはないでしょう。頑固といえば頑固ですが、お客さまの側もそういう味を好まれる方が多く、気にいった人たちに喜んでいただければ、それでいいと思っています。
明治天皇さんも味噌松風がお好きだったようで、ご成婚二十五周年の祝典には献上し、宮内省から感謝状をいただきました。昭和天皇さんもご同様にお好きで、京都御所にお越しの際には当時の入江相政侍従長さんがじきじきに店に来られたこともありますし、いまの皇太子さんも「お祖父さまにおみやげにする」言われて、お買い求めになられました。そういうことも、えらいありがたいことやと思っています。

店舗情報

創業 承応年間
商号 松屋常盤
所在地 京都市中京区堺町通丸太町下ル
電話 075-231-2884
FAX 075-231-2884
営業時間 午前9時~午後5時
定休日 年始のみ
松屋常盤 地図 松屋常盤 外観

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