京を代表する名物「千枚漬」を考案した老舗
千枚漬本家 大藤
御所の美しい風景を模した京名物「千枚漬」
初代・大黒屋藤三郎は、もともと大膳寮の賄方、つまり、御所の料理方を勤めていた。やがて初代は、宮中で使用していた聖護院かぶらを主材料とした漬物を考案し、慶応元年(1865年)から漬物を商うようになった。このとき創出されたのが、京名物として名高い「千枚漬」である。
千枚漬は、薄くスライスした聖護院かぶらと壬生菜を組み合わせ、昆布を用いて塩漬けし、酢、味醂などを加えてつくられる。その意匠には、初代が御所に勤めていたころの思いが込められており、かぶらを玉砂利、壬生菜を松の緑に見立てて、御所の風景を表現しているとのこと。千枚漬という名称は、一つの樽の中に漬けられていたかぶらの枚数がたいへん多かったことから、発売当時、お客によって名付けられたと伝わっている。
創業時は四条寺町付近に小さな店を出していたが、明治五年に新京極がつくられたとき、大藤は新たに漬物店を開いた。このころは、漬物がつくれない時期には食料品や雑貨を商っていたという。また一方では、すぐきをはじめ新商品の開発も進められた。
大藤が創業してから百三十数年が経ち、時代は大きく移り変わってきたが、千枚漬をつくる際の手法や使用する材料は、現在も基本的に変化していない。御所を模した千枚漬の、他に比べるもののない風味と美しさは、未来にわたって守り続けられていくことであろう。
千枚漬と共に生きることによって醸し出される絶妙の風味
京都の漬物は、他の地方のそれと違い、野菜の保存を第一目的として開発されてきたわけではありません。都である京都には、古くから野菜を含めてあらゆる物資が豊富に存在したため、野菜を長期間保存する必要がなかったのです。このような背景のもと、京漬物は「料理のバリエーション」として、あまり長く漬け込まず、繊細な味付けが工夫されてきました。千枚漬の賞味期間が四、五日とたいへん短いのも、京漬物の伝統に乗っ取って開発されたからであるといえます。
当店の千枚漬は、創業以来、手づくりの手法を維持し、基本的には当家の家族だけでつくり続けてまいりました。なぜなら、材料の入荷から仕上げまで、二十四時間千枚漬と共に生活しなければ、千枚漬を本当に美味しく漬けることはできないからです。暑い日には材料を冷蔵庫に移す、寒い日には材料の配分を微調整するといった、日常肌で感じた感覚で漬け方をコントロールすることによって、本物の千枚漬の味が醸し出せるのです。
近年は、かぶらの質や収穫時期が少しずつ変化してきました。しかし、私どもはこれからも、京都で採れた良質の産物を使い、京都で漬けて、京都流の味付けを施していくという理想を追究し、千枚漬の美味しさを後世に伝えていきたいと願っております。
店舗情報
創業 | 慶応元年(1865年) |
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商号 | 株式会社大藤 |
所在地 | 京都市中京区麩屋町通錦小路下ル桝屋町510 |
電話 | 075-221-5975 |
FAX | 075-256-5692 |
営業時間 | 午前8時~午後7時 |
定休日 | 木曜日 |
URL | http://www.senmaiduke.com |