西陣の歴史に育まれ、新しい時代を構築する
千本玉壽軒
京が誇る西陣織の美を雅やかな菓子で表現
日本を代表する高級紋織物として、あまりにも有名な西陣織-。「先染めの紋織」という手法により、あらかじめ染められた糸を用いて織り出される紋様は、雅やかな京の美を表現しているかのようである。
千本玉壽軒の代表銘菓「西陣風味」は、そんな西陣織の美しさをモチーフに創出された、詩情あふれる菓子である。黒胡麻の入ったこし餡を、羽二重餅の皮で巻き込み、氷餅をまぶした様子は、反物の美しさを見事にデザイン化している。また、なめらかな口当たりは、柔らかい絹の風合いを表現しており、味、意匠ともに非常に洗練された銘菓であるといえる。さらに、これを一つずつ畳紙に包み、観世紙縒できりりと結んだ様は、まさに西陣ならではの風情を感じさせる。
「西陣風味」を考案した先代は、本家玉壽軒で修業を積んだ職人だった。昭和十三年に本家の娘と結婚し、暖簾分けの形で、本家玉壽軒が以前あった場所に創業したとのこと。京菓子の店としては比較的新しいともいえるが、そのデザインセンスや味わいは、すでに高いレベルに到達している。
京菓子ならではのデザインを工夫しながら、伝統を築いていきたい
京菓子の魅力は、味もさることながら、そのシンプル化された美しい意匠にあるのではないでしょうか。花鳥風月を菓子で表現する際、そのものの形をリアルに再現するのではなく、細かな部分を省き、いかにすっきりとしたデザインに仕上げるかが、和菓子職人の腕前ではないかと考えています。当店の西陣風味も、こし餡を羽二重餅で巻いた簡単なデザインですが、「西陣の情趣をよく表している」と、ほめていただけることがあります。このようなとき、先代から受け継いだ菓子のデザインには、本当に誇りを感じることができます。
味に関しては、やはり時代に応じた改良がある程度は必要だと思います。西陣風味については、近年は甘みを多少抑え気味に調整し、さらに一包みに一切れだったものを、包丁を入れ、同じ量を二切れにして包むようにしました。これらの改良によって食べやすくなり、お客様には喜んでいただいでおります。
さて、現当主の私で二代目と、当店はまだまだ歴史の浅い店です。これからも私は、創業した先代の父が残した素晴らしい遺産を大切にしながら、さらに発展させ、次代につないでいくことによって、当店なりの伝統を築いていきたいと思っています。
店舗情報
創業 | 昭和13年(1938年) |
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商号 | 千本玉壽軒 |
所在地 | 京都市上京区千本通今出川上ル |
電話 | 075-461-0796 |
FAX | 075-464-6717 |
営業時間 | 午前8時半~午後7時半 |
定休日 | 水曜日 |
予約 | 夏季の生菓子は要予約 |