すっぽんといえば大市、大市といえば宝物の土鍋

大市 中国では五千年来の食材といわれるすっぽん。日本でも弥生時代の登呂遺跡からも食用とされたすっぽんが出土しているほど、古くからたべられていたらしい。そしてすっぽん料理の店といえば、まず取りあげられるのがこの大市である。
 創業は江戸時代中期の元禄年間といわれ、建物もその当時のもので素晴らしい店構えを見せている。しかも、この店にはすっぽん以外にはなく、献立もひとつだけ。先付にすっぽんの肉のしぐれ煮が出て、メインはすっぽん鍋。それも野菜などのあしらいは一切なく、醤油と酒で味をととのえたすっぽんのス-プに、一口大に切った骨付きのすっぽんの肉を入れ、ぐつぐつ煮て客に出す。最後に餅と鶏卵を加えた雑炊にし、香の物と季節の果物が出る。しかし、それが「表現しようのないうまさ、世界一うまいすっぽん料理」として、フランスの料理本に紹介されているほどなのだ。
 さらに、大市のすっぽん料理とくれば、これも必ず引き合いに出されるのが土鍋。昔は備長炭を使っていたが、現在はもっと火力の強いコ-クスで一気に煮あげる。高温のために鍋底が青白くなり、その多くは割れてしまう。そうしたなかで割れ残った土鍋は、すっぽんの脂がしみ込んで銅色に光っている。これこそが大市の宝物なのだが、そうなるには二代百年はかかるという。そして、そのすっぽんは浜名湖で養殖されたもので、大市に入れるスッポンを代々百年もつくってきたもの。そういうこだわりのなかで、世界一うまいすっぽん料理屋としての評判を長く得ているのである。

老舗ながら、味は日々の工夫が大切

初代の近江屋定八が創業して以来、三百年以上にわたってすっぽん一筋に商ってきました。古い方のなかには五,六代も前からご贔屓いただいております。「あの味が忘れられない」とたびたびいらっしゃる方もおられます。たとえば三井家なども最も古いお客さまで、ずっと可愛がってもらっています。とはいいましても、伝統の味を守るだけでは店は潰れてしまいます。毎日が工夫であり、研究を欠かせません。つまり「昨日のものを食わすわけにはいかん」ということです。
 お客さまの層も変化しています。いろいろな小説や随筆、グルメ本などに取りあげられたこともあるのでしょうが、京都だけでなく、地方の方、さらには外国人もよく来られるようになりました。そうであれば、毎日生まれ変わって、お客さまに合わせて、あるいは時代に応じて、進歩していかなければなりません。献立はすっぽん鍋しかありませんが、私の代になって、ス-プやドリンクなどの新商品も始めました。味はもとより滋養強壮にも富んだすっぽんをぜひお試しください。

店舗情報

創業 元禄年間
商号 大市株式会社
所在地 京都市上京区下長者町通千本西入ル六番町
電話 075-461-1775
FAX 075-461-0323
営業時間 午後12時~午後1時、午後5時~7時半
定休日 火曜日、正月不定休
予約 要予約
大市 地図 大市 外観

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