宮中文化の雅を現代に伝える
萬亀樓
生間流の正式な継承者として歩む老舗
丹後から杜氏として京の街に出てきた初代は、享保七年(1722)、「萬屋」の屋号で造り酒屋を創業した。その後、1780年代の天明飢饉の際、原料となる米の入荷が困難となったことに危機感を覚え、茶店を営んで料理を出すようになったという。やがて、料理専門店として事業の方向転換を図り、屋号を「萬亀樓」と改め、現在に至っている。同店は、有職「生間流」の式包丁を正式に継承していることで著名である。式包丁とは、平安初期に宮廷の儀式として行われるようになった有職料理の技法・作法のこと。宮廷の料理方法であった生間家の祖先は、鎌倉期に源頼朝から姓を賜って幕府の包丁方を務め、以後、代々の幕府や織田、豊臣家に仕え、さらに秀吉の命令で桂宮家に仕えた。その後、京極宮家、有楢川宮家にも仕えたが、明治に入って桂宮家が絶家となり、生間家は扶持を離れることとなる。
萬亀樓の料理は、こうした伝統の技法を踏まえ、これを今日風に解釈した「萬亀流有職料理」であるといえる。黒豆の京風ふくめ煮であるぶどう豆を馬上杯に盛った「初箸」に始まり、「皿」「汁」「お作り」と続き、八寸にあたる「台の物」「羮」を経て、最後に「高坏」で締めくくられる。宮廷文化の雅やかな味を、現代の料理として見事にアレンジしたものといえるだろう。
完璧な料理を提供するために計算し尽くされたサ-ビス体制
京料理には、朝廷の節会などで食された有職料理、禅寺の精進料理、茶懐石、川魚料理、町方料理という五つの主なル-ツがあります。そして、それぞれの料理店は、この内のいずれかを自らの源流とし、各料理店流の味を創り上げているといえます。当店の料理は、生間流の継承者として有職料理を基本に置き、これを今日ある材料を用いて、当店流につくり直した料理をお出ししています。
また当店では、一席を二十名程度までとさせていただいております。それは、二十名以上いらっしゃると、最初に運ぶものと最後では、味が微妙に変わってしまうからです。さらに当店の建物は、部屋の広さや、料理を厨房から客室まで運ぶタイミングまで緻密に計算された構造となっております。このように当店では、あらゆる意味で心尽くしのサ-ビスを提供できる体制を構築しているのです。
さて、京都という街は、これまで何度も歴史の大きなうねりを経験してまいりました。そのため京都で商いをする者は、特有の粘り強さを持っているといえます。こうして築かれた京都人の知恵である「三けん」つまり「堅実・賢明・謙虚」を大切にしながら、これからも決しておごることなく、京の味を表現し続けていきたいと思っています。
店舗情報
創業 | 享保7年(1772年) |
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商号 | 有限会社萬亀樓 |
所在地 | 京都市上京区猪熊通出水上ル |
電話 | 075-441-5020 |
FAX | 075-451-8271 |
営業時間 | 午後12時~午後8時(入店) |
定休日 | 不定休(月一回) |
予約 | 要予約(当日の予約も可) |