昔ながらの黒砂糖を用いた代表銘菓「烏羽玉(うばたま)」

亀屋良長 京菓子の名門と謳われ、一時は江戸にまで名を知られた菓子司・亀屋良安から、暖簾分けするかたちで享和三年(1803)に創業。以来、日本の習慣に息づき、四季に応じた和菓子を、彩り豊富につくり続けてきた。  家伝には、次のような伝説が残っている。今から4代ほど前、江戸晩期に同店が衰微しかけた時期があったが、ある日、白い髭をたくわえた老人が門の前に立ち、「氷餅」という菓子の製法を教えて去って行った。これが茶人の間で好評となり、商売は活気を取り戻したという。後に、その老人は日頃から信仰していた近くの「武信神社」のお使いであろうと考え、一層信仰を深めたとのことである。
 創業以来の銘菓である「烏羽玉」は、二百年近い年月を経て、今なお昔のままの姿を残している。茶花のヒオウギの実である「ぬばたま」を象った菓子で、黒砂糖とこし餡を練り固め、寒天でくるんでケシ粒を振り掛けたもの。漆黒のこの銘菓は、平成元年、全国菓子博覧会において裏千家家元賞を受けている。
 また、平成三年に社屋を新築したおり、昭和三十七年の阪急地下鉄工事の影響で枯れていた井戸を掘り直し、「醒ヶ井」と名付けて再び菓子づくりに用いるようになった。醒ヶ井通とは、その昔、洛中三名水と謳われた「佐女牛井」の名が地名として残ったもの。同店では、水への感謝を込めて、毎年七月第一日曜日に「水祭」を開催している。醒ヶ井は一般にも解放され、井戸端で水を汲む人々の語らう姿がしばしば見られるという。

堅実な経営、遊び心を大切にした菓子づくりが信条

 四条醒ヶ井の地に当店があることについては、特別のこだわりをもっています。地名の由来となる佐女牛井は、もとは源氏堀川邸にあった名水であり、足利義政や千利休も用いたと伝えられます。場所は少し離れていますが、当店が掘った井戸から、良質の水が豊富に湧き出たことには、醒ヶ井という地名との因縁を感じずにはいられません。当店では、青い羊かんを求肥で包んだ「醒ヶ井」という菓子もつくっております。
 菓子をつくる際、味やデザインの中に、いかに「遊び心」を込めていくかが肝心であると私は考えます。丸いものを正確に丸くこしらえるのも職人の技術ではあります。しかし、それを楕円にしたり、くぼみをつけたりする遊び心によって、ゆとりや余裕が感じられる菓子になるのではないでしょうか。これからも、お客様に楽しんでもらえるお菓子をつくり続けていきたいと思っています。
 当時は、「懐が澄む」という二代目当主が定めた家訓を堅く守って商いに取り組んでいます。これは、懐を誰に見られてもよいように、適正な利潤をあげながら事業を継続せよという意味です。私は、菓子づくり、あるいは経営において、京都に住む人や京都を訪れる人の期待に添える商売をしなければいけないと考えています。そのためには痩せ我慢も必要ですが、誇りをもって歩んでいれば、痩せ我慢もまた美しく見えるものでありましょう。京の文化を支えてきた「水」を大切にしながら、今後も精進していきたいと思います。

店舗情報

創業 享和三年(1803年)
商号 株式会社亀屋良長
所在地 京都市下京区四条通堀川東入北側
電話 075-221-2005
FAX 075-223-1125
営業時間 午前9時~午後8時(日曜日は~午後6時)
定休日 無休
URL http://www.kameya-yoshinaga.com
亀屋良長 地図 亀屋良長 外観

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