建礼門院ゆかりの伝統ある漬物「志ば漬」

土井志ば漬本舗 平安末期、平清盛の娘である建礼門院は、壇ノ浦の合戦で入水したが、敵の源氏に助けられ、後に大原の寂光院で隠棲した。そして、息子の安徳天皇を亡くした悲しみに暮れる建礼門院に、里の人々は、紫蘇とともに漬け込んだ夏野菜を差し入れたという。建礼門院は、その美味しさと人の情けに感動し、「紫葉漬」という名を付け、これが後に「しば漬」と呼ばれるようになった―。洛北大原の里には、こんな伝承が残っている。
 伝承の真偽はさておき、大原では八百年以上前から、しば漬が家庭の味として漬けられてきた。これに着目した初代・土井清太郎は、地域振興に役立つ事業を始めようと思い立ち、明治三十四年二月、しば漬や地場の松茸を瓶詰や缶詰にして販売した。
 やがて、土井志ば漬本舗の「志ば漬」は、京都を中心にしながら、全国に向けて少しずつ普及していくこととなる。昭和三十五年ごろ、真空包装の技術が導入されてからは、足の早い志ば漬の保存期間を飛躍的に伸ばすことに成功。近年にかけて、さらに販売網は大きく広がっていった。
 昨今、しば漬の名称は全国に知られ、すでに類似の製品が数多く出回ってしまった。しかし本来志ば漬は、大原の地に古来から伝わる特産品である。土井志ば漬本舗は、その伝統をしっかりと守りながら、全国に向けて本当の志ば漬を発信していこうとしている。

大原の里で生まれた本物の志ば漬を普及していきたい

志ば漬は、大原の土壌があってこそつくることが可能な漬物であるといえます。まず、大原で採れる紫蘇は「ちりめん赤しそ」といって、葉が縮れており、約千二百年前に日本に渡来した原種に近いといわれる品種です。この紫蘇と茄子・胡瓜・茗荷などの夏野菜を刻んで、約一割の塩と共に混ぜ合わせて大樽に漬け込み、材料と同程度の重さの重石をします。約一ヶ月間熱成させるのですが、その間に、「乳酸発酵」という現象が起こります。この乳酸発酵の効果によって、志ば漬ならではのほどよい酸味が備わり、独特の紫色に染まっていくのです。
 現在当社では、直営の紫蘇畑で大切に育てた紫蘇を原材料に、合成保存料や着色料を一切使わず、熟練した職人の手作業で志ば漬をつくっています。私どもは、大原の紫蘇と重石加減こそが、志ば漬の美味しさの絶対的な要素であると考えており、これからも、こうした手法にこだわり続けていくつもりです。当社では、志ば漬以外の商品も積極的に開発し、千枚漬など京つけものの比率が多くなってしまいましたが、大原の特産品である志ば漬の普及こそが第一義であるという信念をもっており、今後も「本物の志ば漬」を全国に向けて発信し続けていく所存です。

店舗情報

創業 明治34年(1901年)
商号 株式会社土井志ば漬本舗
所在地 京都市左京区八瀬花尻町41
電話 075-744-2311
FAX 075-744-2317
営業時間 午前8時~午後5時半 (本店)
定休日 元日
予約 団体の工場見学。団体での漬物茶屋「花ぢり」での昼食
URL http://www.doishibazuke.co.jp
土井志ば漬本舗 地図 土井志ば漬本舗 外観

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