京都人からも愛されるくずきり、水羊羹「甘露竹」などが代表銘菓

鍵善良房 祇園、八坂神社の門前に軒を構える鍵善良房は、江戸時代中期、享保年間(1716~1736)の創業と伝わる。もとは、「鍵屋良房」という屋号であったが、代々当主の名に「善」の文字を使ってきたことから、いつしか「鍵屋の善さん」と呼ばれるようになった。その愛称を生かして、一時期は「鍵善」という二文字の名称に変更していたという。後に「良房」を再び付加して、現在の屋号・商号となっている。
 和菓子全般を扱っているが、最も有名なのは、店内の茶房でのみ供される「くずきり」であろう。厳選された吉野本葛を用いてつくられたくずきりは、輪島塗りの器に氷片とともに入っている。見た目に涼しげで、喉ごしがよく、黒蜜との相性も素晴らしい逸品だ。同店のくずきりは、古くからの代表銘菓のようにとらえられがちだが、店内の客席で食べられるようになったのは昭和三十五年頃からと、意外に新しい。それ以前は、親しいお客に店頭や店奥の居間でふるまったり、お茶屋や芝居小屋の楽屋への出前など、限られた範囲で提供していた。つまり、知る人ぞ知る、隠れた味だったのである。
 このほか、青竹に水羊羹を流し込んだ「甘露竹」、阿波和三盆を用いた干菓子「菊寿糖」など、同居の銘菓は、いずれも高く評価されている。

京の文化の内側に目を向け、「ワザ」を磨いていきたい

 古くからある仕事を代々受け継ぎ、時間を重ねていくうちに、やがて歴史が築き上げられます。そうした過程を経て、老舗と呼ばれる店は、高純度化された存在になっていくのです。京の老舗の素晴らしさは、この辺りにも感じられるのでありましょう。当店なども、一部では敷居の高い店だと思われている面があるようです。しかし、私どもがつくる菓子は、お茶とともに楽しんでいただく一服の清涼剤であると考えています。ですから、肩肘を張らない商売を心掛け、値段も高くなりすぎないように努めています。
 また、味については、昔から伝わる材料の基本的な配合はほとんど変わっていません。例えば、餡に入れる砂糖の量なども昔のままです。近年は、洋菓子、和菓子を問わず、甘さを抑える傾向がありますが、当店が築き上げてきた餡の甘さは、変えるべきではないと考えています。そういった意味では、一時の流行に惑わされず、わが道を歩んでいきたいと思っています。
 さて、古き良き京都の情緒も、情報が行き届いた現代においては、オ-プンに成り過ぎ、深遠性が徐々に失われてきた感があります。今一度、京の文化を薄いベ-ルで包み込み、同時に私たちも、京都の奥深さを再認識していく必要があるのではないでしょうか。商いには逆行するのでしょうが、私は内に向かうことによって、さらに「ワザ」を磨き上げ、京の老舗としての文化を深めていけたらと願っています。

店舗情報

創業 享保年間
商号 株式会社鍵善良房
所在地 京都市東山区祇園町北側264
電話 075-561-1818
FAX 075-561-1818
営業時間 午前9時~午後6時 (土日祝は~午後7時)
定休日 月曜日(支店は水曜日)
URL http://www.kagizen.co.jp
鍵善良房 地図 鍵善良房 外観

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